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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

第56回 最新学術情報

最近掲載されたLCH関連の論文抄録を紹介します。

1)若年性黄色肉芽腫:第XIIIa因子、CD11c、CD4の免疫組織化学染色の比較研究」

Juvenile Xanthogranuloma: A Comparative Immunohistochemical Study of Factor XIIIa, CD11c, and CD4.

Salari B, et al. Am J Dermatopathol. 2022 Jul 1;44(7):493-498.

若年性黄色肉芽腫(JXG)はグループCおよびLのnon-LCH組織球症であり、その細胞起源についてはまだ議論の余地がある。マクロファージのマーカーと最近示されたCD11c、および、CD4の発現については、包括的に検討されていない。本研究は、免疫表現型プロファイルを拡大し、JXGの起源についての理解を深めることを目的とした。1995年~2019年に「JXG」と病理診断を受けた症例の病理記録を検索した。第XIIIa因子、CD11c、CD4の免疫組織化学(IHC)染色を実施した。形態学的に初期古典型、古典型、移行型の3サブタイプに分類した。77例が見出され、年齢は中央値7.8歳、男女比は1.3:1であった。CD4は77例、CD68は37例、CD163は5例、ビメンチンは4例で、均一に陽性であった。その他のマーカーの陽性率は、CD11c 75/77(97.4%)、第XIIIa因子 71/76 (93.4%)、S-100蛋白 4/23(17.4%)、CD1a 0/18(0%)であった。形態学的サブタイプとほとんどのマーカーのIHC染色陽性率とは関連がなかったが、第XIIIa因子は移行型で最も陽性率が高く、CD11cは初期古典型で陽性率がより高かった。CD11cとCD4は陽性率が高く、第XIIIa因子よりもJXGの診断に有望なマーカーであった。第XIIIa因子とCD11cの陽性率は3つの形態学的サブタイプで異なったが、統計的に有意ではなかった。

2)LCH患者の血漿シグナル伝達因子は、病変部位のLCH細胞およびT細胞の相対頻度と相関する

Plasma Signaling Factors in Patients With Langerhans Cell Histiocytosis (LCH) Correlate With Relative Frequencies of LCH Cells and T Cells Within Lesions.

Mitchell J, et al. Front Pediatr. 2022 Jun 29;10:872859.

LCH病変には、骨髄由来LCH細胞を含む免疫細胞の浸潤を認め炎症が生じている。病変部の細胞シグナル伝達蛋白の分析から、LCH細胞とT細胞が主に炎症に寄与していることが示唆されている。Foxp3陽性制御性T細胞(Treg)は、LCH患者の病変部および末梢血で増加しており、LCHの病因に関与している可能性がある。対照的に、mucosal associated invariant T (MAIT)細胞はLCH患者の末梢血で減少しているが、その因果関係は不明である。血清/血漿中のサイトカイン濃度は、LCHの病変進展度と関連しており、病変部位への細胞動員に関与している可能性がある。活動性LCH患者と非活動性LCH患者の間で血漿中シグナル伝達蛋白が異なるかどうかを検討した。計38例の血漿中シグナル伝達蛋白を測定し、それに一致する病変/末梢血中の細胞集団を列挙した。この研究は、血漿因子がLCH患者のLCH細胞/LCH関連T細胞サブセットに対応するかどうかを理解することを目的とした。血漿因子と病変/末梢血中の免疫細胞集団との間の関連が特定され、LCHの病因に重要な新しい潜在的な因子が明らかとなった。活動性LCH患者の血漿中の活性型TGF-βは非活動性LCH患者と比較して低いことが明らかとなった。LCH患者の血漿シグナル伝達蛋白とLCH細胞、Treg、MAIT細胞との間にいくつかの関連が特定され、これらがLCHの病因に重要である可能性がある。これらの因子が患者に利益をもたらす適切な予後指標または治療標的になるかどうかを判断するには、これらの関連性に関するさらなる研究が必要である。

3)「若年性および成人の黄色肉芽腫:単一施設での30年間の経験、黄色肉芽腫と他の組織球症との関連についての総括」

Juvenile and adult xanthogranuloma: A 30-year single-center experience and review of the disorder and its relationship to other histiocytoses.

Salari B, et al. Ann Diagn Pathol. 2022 Jun;58:151940.

【背景】若年性黄色肉芽腫(JXG)は最も頻度の高いnon-LCH組織球症であり、その細胞起源、病因、病態は完全には解明されていない。最近の分子遺伝学的研究から他の組織球症との関連が新たに注目を集めている、よく特徴付けられた本疾患の組織病理学的および細胞表面マーカーに関する最新情報を提供することを目的とした。【患者と方法】1989年~2019年に経験した「黄色肉芽腫」と病理学的に診断された全症例を後方視的に検討した。【結果】JXGと診断された525例、計547病変が見出され、年齢中央値は4.5歳、男女比は1.3:1、頭頸部領域病変が40.8%であった。76.8%の例に皮膚病変を認め、15.7%に軟部組織病変を認めた。皮膚や軟部組織以外では、脳病変(2.6%)と肺病変(1.8%)の頻度が高かった。病理組織の基本的3病型は、初期古典型(EJXG)が14.2%、古典型が(CJXG)が45.3%、移行型が(TJXG) (40.5%)であった。多核巨細胞(Touton型または非Touton型)は、CJXGに最も高頻度にみられ、次いでTJXGに多く見られた。有糸分裂は、どの組織型においてもまれ(10高倍率視野あたり1未満)であった。組織型とリンパ球浸潤(P=0.036)、Touton型巨細胞や非Touton型巨細胞の存在(両者ともP<0.001)の間に関連を認めたが、有糸分裂数(P=0.105)や好酸球浸潤(P=0.465)との間には関連を認めなかった。さらに、年齢層と非Touton型巨細胞の存在との間には相関関係を認めた(P=0.012)が、Touton型巨細胞との間には相関を認めなかった(P=0.127)。細胞表面マーカーの発現は、診断時年齢および組織型とは関連していなかった:XIIIa因子 192/204(94.1%)、CD11c 75/77(97.4%)、CD4 82/84(97.6%)、CD68 200/201(99.5%)、CD163 15/15(100%)、CD1a 1/110(0.9%)、S-100 48/152(31.6%)、CD31 15/21(71.4%)、ビメンチン 104/105(99.0%)。【結論】JXGにおいて、3つの基本的な組織型によって診断時年齢が異なるが、3つの組織型の細胞表面マーカーは共通していることを明らかになった。感度と特異度を考慮すると、CD11c、CD4、CD1a、および、CD163(推奨)とCD68のいずれかの免疫染色の組み合わせによって、JXGと他の組織球性疾患との鑑別が可能で、より特異的な診断結果が得られることが分かった。JXGは、MAPK/ERK経路変異の活性化を認める他の同様の組織球症との関連と鑑別の観点からも議論されている。

4)「再発性/難治性の成人LCHに対する経口サリドマイド-シクロホスファミド-デキサメタゾン療法の第2相試験」

Phase 2 study of oral thalidomide-cyclophosphamide-dexamethasone for recurrent/refractory adult Langerhans cell histiocytosis.

Wang JN, et al. Leukemia. 2022 Jun;36(6):1619-1624.

LCHは臨床症状も予後も様々なクローン性組織球性腫瘍である。再発/難治性のLCH患者の標準治療はない。再発性/難治性LCHと診断された32例の患者が、この単一施設の単一群の第2相試験に登録された。TCDレジメン(サリドマイド 100mg 連日、シクロホスファミド 300mg/m2 1、8、15日目、デキサメタゾン 40mg 1、8、15、22日目)が4週間毎に12サイクル投与され、維持療法としてサリドマイドが単独で12か月間投与された。主要評価項目は無イベント生存率(EFS)とした。TCD治療中または治療後の病変増悪、全ての原因による死亡をイベントと定義した。追跡期間は中央値22か月(範囲:5~24か月)で、死亡例はなかった。全体の奏功率は87.5%で、18例(56.3%)が完全寛解、10例(31.3%)が部分寛解であった。2年推定EFSは64.0%であった。リスク臓器浸潤陽性患者と陰性患者でEFSに差を認めなかった(P=0.38)。TCDレジメンの高頻度の有害事象として、グレード1-2の好中球減少症(18.8%)、グレード1-2の便秘(12.5%)、グレード1-2の疲労感(9.4%)、グレード2の末梢神経障害(12.5%)を認めた。サリドマイド、シクロホスファミド、デキサメタゾンの経口投与は、再発/難治性のLCH患者、特にリスク臓器浸潤陽性患者に対して効果的で安全なレジメンである。

5)「Erdheim-Chester病における末梢血免疫細胞および免疫グロブリンスイッチの変化:単一センターの78例の検討」

Profound systemic alteration of the immune phenotype and an immunoglobulin switch in Erdheim-Chester disease in 78 patients from a single center.

Aubart FC, et al. Haematologica. 2022 Jun 1;107(6):1347-1357.

Erdheim-Chester病(ECD)は、まれな全身性のnon-LCH組織球腫瘍であり、CD63陽性CD1a陰性の組織球の多臓器への浸潤を特徴としている。BRAF V600E変異は、ECD患者に高頻度に見られ、造血幹細胞および骨髄系を含むあらゆる免疫系細胞で検出される。免疫細胞と炎症誘発性サイトカインが病変部位に存在することから、ECDには免疫細胞の動員を伴うことが示唆される。ECDにおいて全身性のTh1サイトカインの分泌が特徴と報告されているが、ECDにおいて免疫応答を調整する免疫細胞ネットワークはまだ解明されていない。これに対処するために、単一の大規模施設の78例のECD患者のコホートにおいて、末梢血中白血球のマーカーを検索し、21人の対照群と比較した。ECD患者では、対照群と比較し、末梢血中免疫細胞数の大きな変動、すなわち、形質細胞様・骨髄性1型および2型樹状細胞が減少しており、ほとんどがBRAF V600E変異陽性患者であった。同様に、ECD患者では、対照群と比較して、末梢血中ヘルパーTおよび細胞傷害性Tリンパ球、Bリンパ球数の顕著な減少が認められた。血清免疫グロブリン値の測定により、IgGのIgG1サブクラスからIgG4サブクラスへのスイッチが明らかになり、BRAF V600E変異陽性患者でより顕著であった。PEG化インターフェロンαやベムラフェニブなどの第一選択療法により、これらの変化のほとんどは改善した。この研究により、ECD患者においては、免疫細胞に深刻な障害があることが明らかになり、このことは、このまれな疾患に関わる病態生理の理解および治療方針の改善に役立つ、重要な新しい情報である。

6)「成人肺LCHの長期予後:前向きコホート」

Long-term outcomes of adult pulmonary Langerhans cell histiocytosis: a prospective cohort.

Benattia A, et al. Eur Respir J. 2022 May 26;59(5):2101017.

【背景】成人肺LCHの長期予後、特に生存率はほとんどわかっていない。これまでの2つの後方視的研究では、死亡率が高いことが報告されているが、これは我々の臨床経験とは対照的である。【方法】この問題に対処するために、2004年~2018年にフランス国立組織球症リファレンスセンターに登録された、新たに診断された全ての肺LCH患者を対象とし解析した。主要評価項目は「生存期間」とし、これは登録から肺移植または全ての原因による死亡までの期間と定義した。副次評価項目は、慢性呼吸不全、肺高血圧症、悪性疾患、初期に孤発性肺LCHであった例における肺外病変の累積発生率とした。生存率はKaplan-Meier法を用いて推定した。【結果】206例(平均年齢39±13歳、女性60%、現在の喫煙率95%)を前向きに追跡し、追跡期間は中央値5.1年(IQR:3.2-7.6年)であった。このうち、12例(6%)が死亡した。10年生存率の推定値は93%(95%CI:89-97%)であった。慢性呼吸不全および/または肺高血圧症の累積発生率は、5年でも10年でも5%未満であったが、これらを発症した患者の58%は死亡した。23例に27の悪性腫瘍を認めた。肺がんの推定標準化発生率は、年齢と性別が一致したフランス人集団と比較して、17.0(95% CI:7.45-38.7)倍であった。孤発性肺LCH患者157例中8例(5.1%)が肺外病変を続発した。【結論】肺LCHの長期予後は、以前に報告されたものよりも有意に良好である。重篤な合併症を早期に発見するために、診断後、綿密に経過観察する必要がある。

7)「中枢神経Rosai-Dorfman病の治療:単一センターでの経験」

Management of central nervous system Rosai-Dorfman disease: A single center treatment experience.

Zhu Q, et al. J Clin Neurosci. 2022 May;99:275-281.

Rosai-Dorfman病(RDD)は、さまざまな臨床症状を伴う特発性の組織球症である。2011年1月~2020年12月に三次病院で経験し、病理学的に確定診断された中枢神経系を主病変とするRDD患者を後方視的に分析した。臨床所見、画像、治療に関するデータを収集した。中枢神経RDD患者は男性16例、女性5例であった。患者の年齢は6歳~68歳、中央値37歳であった。これらの21例のうち、15例が頭蓋内RDD、6例が脊髄RDDであった。中枢神経RDDの主な症状は、頭痛、てんかん、神経障害であった。患者の76.19%(16/21)は、MRIで硬膜を中心とする均一な増強効果のある病変を認めた。20例が初期治療として手術を受け、1例がステロイド治療後に生検を受けた。42.9% (9/21)の患者は病変全切除が可能で、47.6% (10/21)は部分切除、0.9% (2/21)は生検であった。症状は改善または安定した。頭蓋底に病変を認めたRDD患者の多く(4/5:80%)は、何らかの合併症を認めた。経過観察期間は中央値47か月(幅:11~108か月間)であった。2例が、病変の進行または再発をきたした。臨床症状が多彩であること、および、画像所見として硬膜を中心とする均一な増強効果を認めることから、中枢神経RDDを診断することは臨床医にとって容易ではない。治療を要する中枢神経RDDには手術が有効である。薬物療法と放射線療法は、非侵襲的治療であるが、有効性の程度はさまざまである。中枢神経RDDの全体的な予後は悪くはない。定期的な長期フォローアップが必要である。

8)「胸腺病変を伴う小児LCHの特徴と治療転帰」

Characteristics and Treatment Outcomes of Pediatric Langerhans Cell Histiocytosis with Thymic Involvement

Yao JF, et al. J Pediatr. 2022 May;244:194-202.e5.

【目的】胸腺病変を伴う小児LCHの患者の特徴と治療転帰を評価する。【研究デザイン】2016年9月~2019年12月に当センターで経験した胸腺病変を伴う19例の小児LCHの臨床的、生物学的、画像特性を後方視的に分析した。さらに、化学療法または標的療法で治療された例の治療反応と転帰を分析した。【結果】433例の小児LCHコホートの4.4%に胸腺病変を認め、全て多臓器型であった。胸腺病変のある患者は、胸腺病変のない患者よりも、若年で、肺と甲状腺病変が多く、骨病変が少なかった。胸腺病変のあるほとんどの患者は、免疫検査異常を伴い、Tリンパ球数とIgG値が低値であった。47.1%の症例が、導入療法6週間後に治療反応を示し、一次治療に反応しなかった例の92.3%は、二次化学療法および/または標的療法後に胸腺病変の消退を示した。進行/再発率は、二次化学療法に移行した患者とdabrafenib療法に移行した例の間に差を認めなかった(33.3% vs. 25%, P=1.000)。胸腺病変のある例の生存率は、胸腺病変のない例と差はなかった。二次化学療法で治療された例は、dabrafenib療法を受けた例よりも重篤な有害事象を示す例が多かった(88.9% vs. 0%, P<0.001)。【結論】LCHでは胸腺病変はまれであり、特徴的な臨床特性を示した。ほとんどの胸腺病変は化学療法により改善する可能性があり、BRAF阻害剤は、BRAF V600E変異のある乳児に対して毒性の少ない有望な治療オプションとなる可能性がある。

9)「骨LCHに対するCTガイド下経皮的コルチコステロイド局注療法:3施設の後方視的分析」

Percutaneous CT-guided corticosteroid injection for the treatment of osseous Langerhans cell histocytosis: a three institution retrospective analysis.

Chang CY, et al. Skeletal Radiol. 2022 May;51(5):1037-1046.

【目的】多施設研究における骨LCHに対するCTガイド下コルチコステロイド局注療法の安全性と有効性を評価することを目的とする。【患者と方法】3施設でIRB承認を得ての研究を行った。骨LCHの治療のために実施されたコルチコステロイド注射の臨床データ、施行データ、画像データを後方視的に検討した。病変の位置、病変の最大径と体積、コルチコステロイドの種類と用量、注射から病変の大きさ/体積・症状の変化までの期間について記録した。一般化された推定式(被験者ごとに複数の病変を考慮)を用い、予測因子(用量、最大病変径、病変体積)と転帰(画像所見の部分的および完全消失までの時間、疼痛改善までの時間)との関連を評価した。この分析は、解剖学的部位によって調整した。【結果】36例(女性20例[56%]、男性16例[44%]、年齢12±11歳[2-57歳])に40回のコルチコステロイド注射が実施されていた。病変の最大径は平均3.2±1.7cm、体積は平均10±17cm3であった。画像と臨床経過は、それぞれ22/40(55%)、34/40(85%)で追跡可能であった。全ての病変がコルチコステロイド注射で改善した。画像所見の部分的および完全消失までの期間は、それぞれ13±9週間および32±13週間で、疼痛消失までの期間は22±14 週間であった。合併症はなかった。【結論】CTガイド下のコルチコステロイド注射は、骨LCHに対する安全で効果的な治療法である。全ての患者で痛みが解消し、画像所見が悪化した患者はなかった。

10)「視床下部-下垂体領域のLCHの臨床的特徴と診断の難しさ」

Clinical features and difficulty in diagnosis of Langerhans cell histiocytosis in the hypothalamic-pituitary region.

Oda Y, et al. Endocr J. 2022 Apr 28;69(4):441-449.

LCHはまれに視床下部-下垂体領域に浸潤する多臓器疾患である。視床下部-下垂体領域LCHは重度の進行性下垂体機能障害を呈し、その予後は不良である。視床下部-下垂体領域に同様の症状を示す疾患がいくつかあること、その部位は前頭蓋底の最深部に位置し重要な正常組織に近接してするため生検標本の量が限られることから、視床下部-下垂体領域LCHの確定診断は、かなり困難で面倒である。化学療法は、LCHの確立された治療法であり、タイムリーで正確なLCHの診断は、早期の治療介入に不可欠である。2009年~2020年に経験した4例の視床下部-下垂体領域LCH患者(全て女性、28~44歳)の臨床的特徴と生検手順を後方視的に解析した。鞍上部病変の最大径は23~35mmで、2例に飛び石状病変を認めた。全例に、中枢性尿崩症、高プロラクチン血症、重度の下垂体前葉機能不全を認めた。2例は進行性病変であった。さらに、4例は体重増加、2例は視覚障害、2例は意識障害を呈した。LCHの発症から診断までの期間は3~10年(平均7.25年)であった。最終診断までに計8回の手術が行われていた。生検による正診率は50%(4/8)であった。視床下部-下垂体領域LCHの臨床的特徴は、他の視床下部-下垂体領域疾患の臨床的特徴と非常に類似しており、その症状は進行性で不可逆的である。臨床医は、正確な診断と適切な治療を行うために、病変がステロイド療法に抵抗性である場合、より積極的な手段で生検を繰り返すことを検討する必要がある。