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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

JLSG-02

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1996年から行われたJLSG-96研究では、小児の多臓器型および多発骨型LCHの生存率は著しく向上したが(それぞれ94%と100%)、依然として再発率は高く無イベント生存率は満足のいくものではなかった(それぞれ29%と69%)(Morimoto A, 2006)。この結果を受けて、小児LCHの無イベント生存率の向上を目指し、2002年から日本LCH研究グループ(JLSG)により開始された小児LCHに対する日本で2つ目の多施設共同プロトコール研究がJLSG-02である(Morimoto A, 2016; Morimoto A, 2018)。

JLSG-02はJLSG-96の基本骨格を継承した。寛解導入率を上げるために、導入Aのプレドニゾロン(PSL)を連日投与とし、導入Aに不応で増悪する例に対しJLSG-96の導入B(JLSG-02では-96の導入Bを導入B1と呼称)にシクロスポリン(CsA)を併用した導入B2を新たに設けた。また、再燃率を低下させるため、ビンブラスチン(VBL)/PSL⇔メソトレキセート(MTX)に6メルカプトプリン(6-MP)連日を併用した24週間の後期維持相(維持C)を追加し、治療期間を54週間に延長した。多臓器型・多発骨型ともに同じレジメンで治療した。

2002年1月~2009年7月に新規に組織学的にLCHと診断された18歳未満の患者が登録され、多臓器型147例、多発骨型82例が解析対象となった。

多臓器型の治療成績(Morimoto A, 2016)

147例のうち、リスク臓器(造血器、肝、脾or肺)浸潤陽性(RO+)が84例、リスク臓器浸潤陰性(RO-)が63例であった。147例のうち123例(84%)が導入Aに反応し、初期反応率(6週時点)はJLSG-96(76%)を上回った。RO+群とRO-群に分けてみると、RO-群は59/63例(94%)とJLSG-96(94%)と変わりなかったが、RO+群では64/84例(76%)とJLSG-96(68%)を上回った。 5年の全生存率は、RO+群で91.7%(95%CI 85.8-97.6)(Fig1A)、RO-群で100%とJLSG-96と同様に良好であった(Fig1C)。5年の無イベント生存率は、RO+群で46.2%(95%CI 35.5-56.9)(Fig1B)、RO-群で69.7%(95%CI 58.4-81.8)とJLSG-96と比べ有意に改善していた(p=0.042、p=0.006)(Fig1D)。 導入A反応した例における、その後の増悪および再発は、RO+群で27/64例(42%)、RO-群で15/59例(25%)であった。

導入Aによっても不変であった17例のうち、16例が導入B1を受け、うち12例(75%)に反応が得られ、これら全例生存した。導入B1に不応であった4例のうち3例が死亡した。導入Aによっても増悪した7例のうち、5例が寛解導入B2を受け、うち3例(60%)に反応が得られ、2例が生存した。導入B2に不応であった2例は同種移植を受け生存した。導入Aに不応(不変および増悪)例に対する導入Bの反応率は15/21例(71%)と導入Bの有効性が示唆された。

RO+群の生存率は、導入Aに反応例では98.4%(95%CI 95.4-100)であったが(Fig2A)、不応例では70.0%(95%CI 49.9-90.1)(Fig2B)とJLSG-96と比べて改善はなかった。

多発骨型(Morimoto A, 2018)

82例のうち76例(93%)が導入Aに反応し、55例(67%)は最終観察時点まで再発なく経過した。死亡例はなく5年のOSは100%で。5年の無イベント生存率は66.7(95%CI 56.5-77.0)で、JLSG-96と差はなかった(Fig3)。導入Aに反応した例における、増悪および再発は、21/76例(28%)であった。

結果の総括

多臓器型については、強化した導入Aにより初期治療反応率は向上した、強化した導入Aと維持Cの付加により再燃率は低下し、その結果、無イベント生存率はJLSG-96に比べて有意に改善した。しかし、未だ50%に達せず、さらなる改善が求められた。また、導入Aに不応のRO+患者の生存率は70.0%と未だ低く、この群に対する治療にも課題が残った。

多発骨型については、導入Aの強化および治療延長のEFS改善に対する効果を認めなかった。

これらのことから、多臓器型に対してはJLSG-02治療が、多発骨型に対してはJLSG-96治療が適していると考えられた。

文献

  1. Morimoto A, Shioda Y, Imamura T, Kudo K, Kawaguchi H, Sakashita K, Yasui M, Koga Y, Kobayashi R, Ishii E, Fujimoto J, Horibe K, Bessho F, Tsunematsu Y, Imashuku S. Intensified and prolonged therapy comprising cytarabine, vincristine and prednisolone improves outcome in patients with multisystem Langerhans cell histiocytosis: results of the Japan Langerhans Cell Histiocytosis Study Group-02 Protocol Study. Int J Hematol. 2016; 104: 99-109.
  2. Gadner H, Grois N, Arico M, et al. A randomized trial of treatment for multisystem Langerhans' cell histiocytosis. J Pediatr. 2001; 138: 728-734.
  3. Morimoto A, Shioda Y, Imamura T, Kudo K, Kitoh T, Kawaguchi H, Goto H, Kosaka Y, Tsunematsu Y, Imashuku S; Japan LCH Study Group. Intensification of induction therapy and prolongation of maintenance therapy did not improve the outcome of pediatric Langerhans cell histiocytosis with single-system multifocal bone lesions: results of the Japan Langerhans Cell Histiocytosis Study Group-02 Protocol Study. Int J Hematol. 2018; 108: 192-198.