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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

第7回 最新学術情報(2007.2)

最近掲載されたLCH関連の論文抄録を紹介します。

1)「肺LCHに対する肺移植:多施設解析」

Lung transplantation for pulmonary langerhans' cell histiocytosis: a multicenter analysis.

Dauriat G et al. Transplantation. 2006 Mar;81(5):746-750.

【背景】肺移植は、進行した肺LCH例に対する治療選択肢の一つかもしれない。しかし、どのような症例に肺移植をするのか、またその転帰はどうかについては、ほとんど知られていない。【方法】フランスの7施設において行われた39例の末期の肺LCHに対する肺移植ついて、質問用紙による後方視的な多施設解析を行った。【結果】39例のうち、15例は片肺移植、15例は両肺移植、9例は心肺移植を受けていた。評価時点で、31%の症例で肺外病変があり、92%に肺高血圧(PAPm>25 mm Hg)が、72.5%に中等から重度の肺高血圧(PAPm> or =35 mm Hg)がみられた。生存率は、1年時点で76.9%、2年時点で63.6%、5年時点で57.2%、10年時点で53.7%であった。病変の再燃が8例(20.5%)にみられたが、生存率には影響しなかった。再燃の唯一の危険因子は、移植前の肺外病変の有無であった。【結論】重度の肺高血圧は、末期の肺LCH症例によく見られる症状である。肺移植後の再燃率は約20%あるが、移植後の生存率は良好であり、肺移植は末期の肺LCH例に対し治療選択肢の一つである。

2)「小児LCHにおける口腔内病変:8例の臨床および病理学的検討」

Oral manifestations of langerhans cell histiocytosis in a pediatric population: a clinical and histological study of 8 patients.

Mortellaro C et al. J Craniofac Surg. 2006 May;17(3):552-556.

LCHは、原因不明のまれな疾患で多様な病像を呈し、単発または多発の骨溶解病変や軟部組織病変が臨床的な特徴である。口腔内病変は、全身的な症状に先行し出現することや、感染症や炎症性疾患に類似することもある。ここで提示する口腔内病変を伴った8例の小児LCHのうち4例では、口腔内病変がLCHの極初期症状であった。診断確定と再燃が臨床的に疑われる例の確認のために、注意深い臨床検査と適切な組織学的検討が必要である。免疫組織化学検査は、信頼性できる補助的な組織学的検査であり、それにより全例において診断確定が可能であった。

3)「2-CdAによる再燃小児LCHの治療」

Treatment of recurrent Langerhans cell histiocytosis in children with 2-chlorodeoxyadenosine.

Mottl H et al. Leuk Lymphoma. 2006 Sep;47(9):1881-1884.

研究の目的は、再燃した小児LCHに対する、プリン誘導体である2-CdAの効果を評価することである。13例の再燃LCHの臨床経過を後方視的に検討した。これら13例は、1997年7月から2005年5月に2-CdAで治療された。診断時年齢の中央値は4歳7か月、2-CdA治療までの期間の中央値は16.4か月であった。4例は0.1mg/kg/日で7日間を、9例は5mg/m2/日で5日間を、21日毎に繰り返し投与を受けた。2-CdAの投与コースの最大回数は6回であった。2-CdA計76コースは問題なく投与できた。13例全例において放射線学的に反応があった。9例は、完全寛解を保ち追加治療は不要であった。4例は、他の追加治療(放射線照射2例、ビンブラスチン・プレドニン・6-MPによる維持療法1例、ビンブラスチン+放射線照射1例)を受け、現在寛解している。血液毒性は軽度であり、感染症の併発はなかった。2-CdA治療開始後の観察期間の中央値は4年3か月(7か月~8年2か月)であった。これらのことは、LCHに対する2-CdA治療の有効性の報告を裏付ける。しかし、2-CdA投与によっても寛解に至らない高危険群におけるこの薬剤の役割を確定するために、さらなる検討が必要である。

4)「LCHの神経変性病変のMRI像」

MRI features of neurodegenerative Langerhans cell histiocytosis.

Martin-Duverneuil N et al. Eur Radiol. 2006 Sep;16(9):2074-2082.

LCHの中枢神経系合併症には、組織球肉芽腫による占拠性病変と、進行性小脳失調症を特徴とする変性性病変がある。変性性病変にしぼりMRI所見を解析した研究はほとんどない。ここでは、変性性病変のみを呈した13例のMRI所見を提示する。後頭蓋窩病変を12例(92%)に認め、7例は小脳白質に対称性T2高信号病変(うち5例は歯状核に限局性T1高信号病変を伴っていた)を、9例は隣接する橋被蓋白質に明らかなT2高信号病変(うち4例は橋錐体路に高信号病変を伴っていた)を認めた。小脳萎縮を8例に認めた。テント上の病変を11例に認め、8例は大脳白質にT2高信号病変を、8例は淡蒼球に点状対称性T1高信号病変を認めた。広範な大脳萎縮を3例に、脳梁の著明な局所性の萎縮を3例に認めた。これらの所見は、以前は喚起されていなかったMRI所見であり、神経変性性LCHを正確に診断するための助けとなる。

5)「LCHにおける全身MRI:X線検査や骨シンチとの比較」

Whole-body MRI of Langerhans cell histiocytosis: comparison with radiography and bone scintigraphy.

Goo HW et al. Pediatr Radiol. 2006 Oct;36(10):1019-1031.

【背景】LCHにおいては、病変の広がりの評価が、有力な予後予測因子のひとつである。以前は単純レントゲンや骨シンチが用いられた。最近では、全身MRIが、成人でも小児でも、骨や骨外病変の検出に有用であると報告されている。【目的】LCH患者における全身MRIの有用性を、単純レントゲンと骨シンチと比較し評価する。【対象と方法】生検によってLCHと診断され、単純レントゲンまたは骨シンチが撮られた9例の小児(1~7歳、平均3.3歳)において、43回の全身MRI検査を行った。骨病変と骨外病変の全身MRI所見を、単純レントゲンならびに骨シンチ所見と比較した。【結果】単一病変単一臓器型が1例、多病変単一臓器型が3例、多病変多臓器型が5例であった。全身MRIにより、8例中3例(38%)に単純レントゲンでは検出できなかった骨病変が、8例中2例(25%)に骨シンチでは検出できなかった骨病変が見つかった。全身MRIにより、9例中5例(56%)に骨外病変が見つかり、このうち単純レントゲンで検出可能であったのは肺病変の1例のみであった。2例では、全身MRI所見によって治療が変更された。【結論】全身MRIは、単純レントゲンや骨シンチに比べ骨病変の検出感度が高いだけでなく、骨外病変の検出も可能であることから、診断時ならびに経過観察時におけるLCHの病変の広がりを評価する方法として有用である。

6)「多臓器LCH患者の長期的な障害と身体的QOL」

Long term morbidity and health related quality of life after multi-system Langerhans cell histiocytosis.

Nanduri VR et al. Eur J Cancer. 2006 Oct;42(15):2563-2569.

【背景】LCHはクローン性の多臓器疾患であり、小児も成人も罹患し、長期的な障害を残すことがある。しかし、生存者の総合的な障害は正確にはわかっていない。【対象と方法】40例の多臓器型小児LCHの長期生存者について、身体所見、身体的QOL、脳画像検査、神経精神検査、内分泌検査、呼吸機能検査、聴力検査を含む横断的研究を行った。障害を表す尺度として「障害スコア」を考案した。【結果】75%の例に長期的な障害を認め、視床下部‐下垂体系の機能障害(50%)、認知障害(20%)、小脳障害(17.5%)が最も多かった。半数の例は中等度から重度の障害をもち、もっとも重度の例は独立して生活できない状態であった。身体的QOLは、「障害スコア」とよく相関し(p<0.001)、50%以上の例で低下していた。【結論】多臓器病変LCHによる臓器障害は、成人での生活にまで影響する長期的な障害の原因となる。注意深い計画的で集学的な経過観察が、問題の早期発見と患者のQOLに対する影響を軽減する適切な処置をするために必須である

7)「小児期発症LCHにおける内分泌障害」

Endocrine disorders in pediatric - onset Langerhans Cell Histiocytosis.

Amato MC et al. Horm Metab Res. 2006 Nov;38(11):746-751.

LCHは様々な臨床像を呈するまれな疾患である。この後方視的研究の目的は、小児期発症LCHの臨床像や検査所見の様式や長期経過を評価することである。組織学的にLCHと診断された46例を調査した。10例(22%)に内分泌障害を認めた。10例全例に中枢性尿崩症を認め、4例にGH欠損を、2例に性腺機能低下を認めた。副腎、プロラクチン、甲状腺系の異常を認めた例はなかった。3例に肥満を認めた。8例は軟部組織浸潤を、5例は骨浸潤を認めた。尿崩症を伴う全例においてMRI下垂体後葉の高輝度スポットは消失し、4例に漏斗部浸潤(トルコ鞍内または鞍上の腫瘤を伴う例もあり)がみられた。多臓器型LCHの検査には中枢神経の画像検査を含むべきである。漏斗部浸潤や尿崩症をみたときには、LCHを考えるべきである。内分泌学的検索は、早期のホルモン療法を可能にし、小児LCH例のQOLを向上させるために必要である

8)「肺LCH:小児患者における多様性」

Pulmonary Langerhans cell histiocytosis: a variable disease in childhood.

Odame I et al. Pediatr Blood Cancer. 2006 Dec;47(7):889-893

【背景】肺LCHは、小児ではまれであるが、多臓器型LCHに最も多い。成人では、それと対照的に、肺病変は最も頻度が高く、通常は単一臓器病変である。カナダの2施設において診断された小児の肺LCHの臨床像、経過、転帰について、後方視的に解析した。【方法】2施設においてLCHと診断された18歳未満の小児例の診療録を、発症頻度、病理診断、臓器浸潤を確認するために調査した。肺病変を伴うLCH例については、さらに、肺病変の臨床像、治療法、経過、転帰を調査した。診断時と経過観察時の肺のレントゲン像とCT像を再調査した。【結果】178例のLCHのうち、40例(22.5%)は多臓器型であった。13例(7.3%)に肺病変がみられ、7例は診断時に、6例は病期進行に伴ってみられた。肺病変の診断を受けた年齢は、中央値10.1か月、平均11.9か月であった。肺病変例は、全例が多臓器型であり、半数は呼吸器症状がなかった。無病生存率は、経過観察期間平均7年の時点で、70%前後であった。4例が死亡し、うち3例は他のリスク臓器浸潤を伴っていた。生存例の9例中5例では、肺病変は放射線学的に消失していた。【結論】肺病変は小児LCHの10%未満であるが、多臓器型LCHでは30%以上にみられる。肺病変をもつ例の半数は無症状であり、その予後は他のリスク臓器浸潤を伴うかどうかによると考えられる。小児の多臓器型LCHの肺病変は、成人の単一臓器型LCHの肺病変とは異なる疾患と考えられる。