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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

第23回 最新学術情報(2013.12)

最近掲載されたLCH関連の論文抄録を紹介します。

1) 「LCH:2003から12年の韓国の三次病院での後方視的分析」

Langerhans cell histiocytosis: a retrospective analysis in a Korean tertiary hospital from 2003 to 2012.

Kwon SH, et al. J Dermatol. 2013 Oct;40(10):824-8.

LCHの疫学調査は、その希少性と病変が多臓器におよぶために難しい。本研究の目的は、臨床データセンター(CDW)を介して、LCHの疫学的特徴を明らかにすることである。2003から12年の間の三次紹介病院のすべての部門から得た30例のLCH患者の臨床データを、CDWを検索することにより、後方視的に分析した。男女比は2.8:1であった。発症年齢は生後7日から57歳(中央値13歳)であった。このうち、36.7%は10歳未満で初発症状があった。診断時の浸潤臓器は、骨(66.7%)、皮膚(16.7%)、肺(13.3%)、リンパ節(3.3%)であった。皮膚病変と骨病変の多臓器型が1例あり、全30例で31病変があった。単一臓器型(96.7%)のうち、69.0%は骨病変であった。この研究は、CDWを介して三次病院のすべての部門からのLCH症例の臨床的特徴を明らかにしており、希少疾患の新しい疫学的アプローチとしてCDWの潜在的な役割を示している。

2)「小児LCHにおけるVEGFおよびp53バイオマーカー」

VEGF and p53 biomarkers in pediatric patients with Langerhans cell histiocytosis.

Mehrazma M, et al. J Pediatr Hematol Oncol. 2013 Oct;35(7):e292-5.

【背景】LCHは、樹状ランゲルハンス細胞が異常に集積する稀な疾患である。限局性病変(単一臓器)型では、自然治癒することもあるが、多臓器型では、1/3の例は臓器障害をきたし予後不良である。LCHの病因におけるp53および血管内皮増殖因子(VEGF)の役割を検討し、疾患の程度とのそれらの関連について調べることが本研究の目的である。【症例と方法】LCHと確定診断された、26例から得た生検標本でp53およびVEGFの免疫組織化学染色をおこなった。【結果】男性13例、女性13例であった。発症時年齢は2か月から18歳(平均41.9か月)であった。多臓器型が61%(男児8例、女児8例)であった。多臓器型の例は単一臓器型の例よりも年長であった。p53タンパクは92%の例で検出され、一方、VEGFは61.5%の例に発現し多くは多臓器型であった。【結論】このことから、血管新生因子は、LCHの臨床病態に関連し、予後や治療に重要である可能性がある。しかし、より多くの症例でのさらなる研究が必要である。

3) 「脊椎LCH:小児と青年、成人における臨床像、画像、診断の比較研究」

Langerhans cell histiocytosis of spine: a comparative study of clinical, imaging features, and diagnosis in children, adolescents, and adults.

Huang WD, et al. Spine J. 2013 Sep;13(9):1108-17.

【背景】脊椎LCHに関する文献は今までに多数あるが、ほとんどはその管理法について記載されている。小児、青年、成人における脊椎LCHの臨床的およびX線像の違いについて記載した文献はない。【目的】誤診を避けるために、小児、青年、成人における脊椎LCHの臨床像と画像の違いを総括し強調することである。【研究デザイン】脊椎LCHの小児および成人の後方視的研究。【症例】当施設で治療を受けた連続した症例。【評価方法】疼痛の視覚的アナログ尺度、神経学的状態のためのフランケル尺度、画像としてX線、CTおよびMRI。【方法】1996年から2010年の間に当施設で組織学的に診断された脊椎LCH、76例が治療を受けた。病理学的および/または放射線学的に、脊椎病変のある症例のみを抽出した。年齢に基づいて、2つのグループに分けた。グループIは小児および青年(18歳未満、40例)で、グループIIは成人(18歳以上、36例)である。年齢、性別、臨床症状、画像、および診断について解析した。病理学的診断は、病変部位の針生検または開放生検により行った。【結果】76例のうち男性55例、女性21例(男女比 2.62:1)であった。頸や背部も痛みは、全例において見られる最も一般的な症状で、一部の患者では唯一の症状であった。脊椎の可動制限は、痛みに次いで多い症状であった。37例に神経症状が見られた。成人例のほうが神経症状は多かった(p < 0.005)。病変の分布は、頚椎が最も多く、次いで胸椎、腰仙椎であった。脊椎LCHの小児および青年例の単純X線画像では、多くは典型的な扁平椎の所見が見られたが、成人例では典型的所見ではなく様々な程度の脊椎圧潰を示した。2グループ間のCTスキャンの画像は類似し、全例で椎体および/または後部の溶解性病変がみられた。グループIで病変は、MRI T1強調画像で、15例で低信号、25例で等信号であった。MRI T2強調画像で、19例は中等度から軽度高信号、残りの例は高信号であった。グループIIでは、T1強調画像で、29例は低信号、7例は等信号、T2強調画像で全例は高信号であった。傍脊椎軟組織腫瘤を、グループIの28例、グループIIの23例で認めた。グループIの15例、グループIIの23例に硬膜外脊髄圧迫を認めた。オーバースリーブ様またはダンベルサインは、グループIの21例にみられたが、グループIIでは4例のみであった。【結論】脊椎LCHの最も一般的な臨床症状は、頸や背部の痛み、次いで脊椎の可動制限、神経症状、変形である。神経症状は成人例に多くみられる。扁平椎は小児および青年例の典型的な画像所見であるが、成人ではまれである。CTは、脊椎病変の解剖学的な特徴を描出するのに最もよい方法であり、MRIは骨髄や軟部組織を描出するのに最適である。MRIでのオーバースリーブ様変化は、小児や青年では、脊椎LCHだけでなく扁平椎の特徴かもしれない。治療戦略を決定する前に、CTガイド下の針生検を実施すべきである。

4)「眼窩のLCH」

Langerhans cell histiocytosis of the orbit.

Kiratli H, et al. Eur J Ophthalmol. 2013 Jul-Aug;23(4):578-83.

【目的】LCHの管理には議論の余地がある。本研究では、我々の臨床経験と眼窩のLCHの治療成績を評価した。【方法】生検で確定診断された連続した17例の眼窩LCHの後方視的、非比較介入のケースシリーズ。主要評価項目は、手術と化学療法への反応性、尿崩症の発症。【結果】13例(76.5%)が男性で、診断時年齢は2-39歳(平均10.7歳)であった。最も頻度の高い症状は眼球突出(8例)、次いで上眼瞼浮腫(4例)であった。5例に痛みを、6例に眼周囲発赤を認めた。外傷の既往のある例はなかった。前頭骨浸潤が最も多く16例に、次いで頬骨浸潤を9例に認めた。また、5例には頭蓋冠、大腿骨、顔面骨、側頭骨および頭頂骨に病変があった。多臓器に病変のある例なかった。10例は、残存病変が多い(5例)、多発骨病変がある(5例)ために、ビンブラスチン(0.2 mg/kg、6-12か月)の化学療法を受けた。4例は肉眼的に腫瘤の完全除去ができた。単一骨病変で限局性の眼窩前部の軟部組織腫瘤のある3例は副腎皮質ステロイドの全身投与(40mg/m2/日、6-10週間)を受けた。観察期間の中央値46か月で、尿崩症を発症した例はなかった。【結論】肉眼的に完全切除できた単一腫瘤の例はそれ以上の治療を必要としないかもしれない。腫瘤切除が不完全または多発骨病変があるためビンブラスチンによる化学療法を受けた例の3年時点の無再燃生存率は90%であった。

5)「頭蓋冠の孤発性LCHの非手術管理」

Nonoperative management of solitary eosinophilic granulomas of the calvaria.

De Angulo G, et al. J Neurosurg Pediatr. 2013 Jul;12(1):1-5.

【目的】頭蓋冠の孤発性のLCHは最も一般的には、外科的切除で治療されている。多くの孤発性LCHは治療せずに改善し、経過観察が合理的な治療選択肢であるという仮説を検証するため、本研究を行った。【方法】診療録から14例の孤発性の頭蓋冠LCHを見つけ出した。6例は、家族および/または神経外科医の方針により切除を受けた。他の8例は、非手術管理(意図的な観察)を選択した。これら8例の臨床経過と画像結果を報告する。【結果】8例中1例は、病変のわずかな拡大と痛みの悪化のために2か月後に手術を受けた。観察期間6-19か月(中央値12か月)で、他の症例はいずれも手術を必要としなかった。これらの7例中5例は、発症時に痛みがあった。これら5例ともに痛みは完全に消失した。残り2例は無症状であった。触知可能な軟部組織の病変が7例にみられ、全例で完全に消失した。5例で放射線学的に病変は完全に消失し、残る2例はほぼ完全に消失した。【結論】孤発性の頭蓋冠LCHの無治療での経過観察は安全かつ合理的な手段であり、それによって不必要な外科的介入を避けられるかもしれない。

6) 「治療延長により多臓器型LCHの転帰を改善する」

Therapy prolongation improves outcome in multisystem Langerhans cell histiocytosis.

Gadner H, et al. Blood. 2013 Jun 20;121(25):5006-14.

最適な治療が明らかでない多臓器型LCHに対する、リスク層別化治療、治療強化、治療期間延長の効果をLCH-IIIにより検証した。リスク臓器浸潤の有無(浸潤ありを高リスク、浸潤なしを低リスク)により層別化し、400例以上を無作為割り付けした。高リスク群は、6週間のビンブラスチン+プレドニゾロン(アームA)またはビンブラスチン+プレドニゾロン+メソトレキサート(アームB)に無作為割り付けし、1または2コース治療した。治療反応があった例は、同じ薬剤の組み合わせに6-メルカプトプリンを加えた維持療法を行い、総治療期間は12か月とした。6/12週時点での反応率(平均71%)、5年生存率(84%)、5年再燃率(27%)は、両群で差はなかった。注目すべきことに、過去の臨床試験と比較すると、同じリスク分類の高リスク群において、過去の6か月間治療のLCH-IとLCH-IIに比べ、生存率は良好(LCH-I 62%、LCH-II 69%、p < 0.001)で、再燃率は低かった(LCH-I 55%、LCH-II 44%、p <0.001)。低リスク群はビンブラスチン+プレドニゾンでずっと治療を受けた。6週時点で治療反応のあった例は、総治療期間6か月または12か月に無作為割り付けした。5年間の再燃率は、12か月のアームD(37%)のほうが6か月間のアームC(54%)に比べて有意に低く(p=0.03)、また、6か月治療のLCH-I(52%)およびLCH-II(48%)に比べても有意に低くかった(p<0.001)。このように、LCH-IIIでは、治療期間の延長により低リスク群の再燃率は減少し、高リスク群ではメトトレキサートの有益性はなかったが、生存率と再燃率は過去の臨床試験より改善した。(臨床試験番号NCT00276757 www.ClinicalTrials.gov)

7) 「成人LCHに対するクラドリビン(2-CdA)による第一線化学療法:単一施設の7例の経験」

Cladribine (2-chlorodeoxyadenosine) in frontline chemotherapy for adult Langerhans cell histiocytosis: A single-center study of seven cases.

Adam Z, et al. Acta Oncol. 2013 Jun;52(5):994-1001.

LCHは、樹状細胞の一種であるランゲルハンス細胞の異常によるまれな疾患で、病因は明らかではない。LCH患者に対する従来の治療法は、通常は有効であるが、一部の患者は治療抵抗性であったり治療毒性が出現したりする。よって、新たな治療法の開【背景】成人LCHは、多様な臨床症状を呈し、従来の治療法に対する成績は一貫してない、まれな疾患である。クラドリビン(2-CdA)の有効性は、再発した多病変多臓器型において示されてきた。この後方視的研究では、第一線化学療法としての2-CdA療法を解析する。【症例と方法】生検によりLCHと診断された7例の男性(多臓器型6例、多病変型1例)が、2-CdA療法(5mg/m2(5例は皮下注、2例は2時間静注)の用量で5日間、4週毎)を4-6コース(中央値4コース)受けた。2例では、シクロホスファミド(300 mg静注を5日間)と副腎皮質ホルモン(デキサメタゾン24mg経口またはメチルプレドニゾロン250mg静注5日間)を2-CdAのコースに併用、2例では放射線療法(皮膚と骨病変に20Gy)、1例では皮膚病変に対する光化学療法(PUVA療法)で治療を強化した。【結果】全例に臨床効果が得られ、ポジトロン放出断層撮影(PET)によって確認された。下垂体浸潤を伴う2例を含む6例(86%)に、長期寛解が得られた(観察期間15-94か月(中央値37か月)、49.8±35.2%)。1例は、侵攻性の早期再燃をきたし、さらなる治療を必要とした。治療関連毒性は、白血球減少を主とする一時的な骨髄抑制であった。グレード3のリンパ球減少が5例(71%)、グレード3の好中球減少症が1例(14%)にみられた。【結論】2-CdAは、単剤あるいは細胞増殖抑制性のあるアルキル化剤と副腎皮質ホルモンとの組み合わせで、多臓器型や侵攻性の多病変型の成人LCHに対して、毒性が低い有効な治療選択肢である。

8)「肺LCH:次世代シーケンシングを用いた多発病変のBRAF V600E変異の頻度は一致する」

Pulmonary Langerhans cell histiocytosis: profiling of multifocal tumors using next-generation sequencing identifies concordant occurrence of BRAF V600E mutations.

Yousem SA, et al. Chest. 2013 Jun;143(6):1679-84.

【背景】肺LCHは成人の喫煙者にみられる両側性の結節性肺疾患で、全身症状を伴わず肺に限局したランゲルハンス細胞の増殖症である。この増殖が生じる分子基盤は不明である。【方法】5例の患者の22個の同時発生した結節のホルマリン固定パラフィン包埋組織からLCH細胞を顕微的に切り出し、次世代シーケンシングを用い46のがん遺伝子の変異をIon PGMシーケンサ(Life Technologies Corporation)によりIon AmpliSeqがんパネルで解析した。変異は、従来のサンガー法または低変性PCR/蛍光融解曲線分析による鋭敏な同時増幅法により確認した。【結果】結節から単離された少量のDNA(10 ng)を用い、Ion PGMシーケンサによる46のがん遺伝子の740か所の突然変異ホットスポットの解析が可能で、1変異あたりの平均深度は2783解読、均一性は92%であった。5例中2例において、BRAF V600E変異がすべての結節に認められた、一方、5例中3例ではがん遺伝子変異は全く認められなかった。【結論】肺LCHは、BRAF V600E変異のあるなしに関わらず、クローン性増殖と考えられる。BRAF V600E変異のある進行例については、vemurafenibのような新規標的療法が使えるかもしれない。

9)「難治性高リスクLCHに対するクロファラビンによる救済療法」

Clofarabine salvage therapy for refractory high-risk langerhans cell histiocytosis.

Abraham A, et al. Pediatr Blood Cancer. 2013 Jun;60(6):E19-22.

治療抵抗性の多臓器型小児LCHは強力な化学療法を行っても予後不良である。シタラビンおよびクラドリビンによる救済療法の有効性は有望であるが、重大な毒性を伴う。今までに、クロファラビン単剤治療により、わずかな毒性で速やかな効果が得られた治療抵抗性LCHが2例報告されている。ここでは、クラファラビン治療を受けたリスク臓器浸潤陽性の小児の治療抵抗性LCHの4例および以前に報告された2例のその後の経過を報告する。この結果から、治療抵抗性LCHに対する救済療法の第一選択としてクロファラビン療法の有用性を評価する臨床試験が行われることが望まれる。

10)「頭蓋骨に限局したLCHの超音波検査による診断および経過観察」

Sonographic diagnosis and monitoring of localized langerhans cell histiocytosis of the skull.

Kosiak W, et al. J Clin Ultrasound. 2013 Mar-Apr;41(3):134-9.

【目的】LCHは、組織球が増殖する原因不明のまれな疾患である。頭蓋骨含む骨病変は小児LCHで最も頻度が高い。頭蓋骨LCHの画像診断は、従来のX線撮影、CT、シンチグラフィー、時にはMRIに主に基づいて行われている。研究の目的は、頭蓋骨に限局した小児LCHの骨病変の診断と経過観察における超音波検査の役割を検討することである。【方法】ポーランドのグダニスク医科大学小児科で、1991~2005年の間に、27例(男5例、女12例、平均年齢6.1歳)がLCHと診断された。14例(52%)が、頭蓋骨に限局したLCHであった。【結果】CTで検出可能な全ての頭蓋骨病変は超音波で検出できた。計30か所の局所病変が超音波で判明した。最大の骨病変は、隣接する軟部組織腫瘤を伴っていた。CTでは26病変が検出可能で、位置と大きさは超音波検査と一致していたが、骨病変に隣接する軟部組織腫瘤を検出するのは困難であった。【結論】小児の頭蓋骨の限局性LCH病変の超音波所見は特徴的ではないが、初期に診断を疑い、治療中に病変の進展を監視するために十分な特性がある。超音波検査は、頭蓋骨LCHの追加の診断手段として考慮すべきである。限局性LCHの超音波検査はCTにとって代わるものではないが、超音波検査によって経過観察でのCT検査の回数を減らすことが可能である。