1) 「単一臓器型と多臓器型LCHにおけるLOH解析」
Analysis of loss of heterozygosity in single-system
and multisystem Langerhans' cell histiocytosis.
Chikwava KR et al. Pediatr Dev Pathol. 2007 Jan-Feb;10(1):18-24. |
LCHの進展に遺伝子変異が関わっているかは明らかではない。本研究では、様々な臨床病期、予後に関わる様々な程度の臓器浸潤のLCHにおいて、がん抑制遺伝子を含む部分的アレル欠失を比較し解析した。6つの癌抑制遺伝子を標的とし、蛍光標識したプライマーを用いPCRでDNAを増幅した。PCR産物を、capillary
electrophoresis genetic analyzerを用いて解析した。loss of heterozygosity
(LOH)を確認するために、ピークの高さの比を、浸潤組織と正常組織で比較した。結果の解析にはFisher's
exact testを用いた。14例の単一臓器型LCH(SS-LCH)と10例の多臓器型LCH(MS-LCH)を解析した。13例は高リスクあるいは特別臓器に浸潤があり、10例は低リスク臓器に浸潤があった。部分的アレル欠失の平均値は、MS-LCHではSS-LCHに比べ有意に高かった(62.7%
vs. 40.3%)。部分的アレル欠失の平均値は、高リスクあるいは特別臓器への浸潤群は低リスク臓器への浸潤群に比べ有意に高かった(53.2%
vs. 39.6%)。5番染色体長腕上のマーカーの部分的アレル欠失は、MS-LCHや高リスクあるいは特別臓器への浸潤群では、SS-LCHや低リスク臓器への浸潤群に比べ有意に高かった(76.3%
vs. 46.2%, 72.7% vs. 37.5%)。これらのデータは進行期や高リスク型のLCHでは癌抑制遺伝子に変異の頻度が高いことを示唆している。疾患の進行や予後不良を予測するこの分析系の有用性を確立するために、5q23部位のLOHを用いた更なる研究が必要であろう。 |
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2)
「胃の好酸球性肉芽腫における肥満細胞の増加は、好酸球浸潤と毛細血管増殖に関連している可能性がある」
Increase of mast cells may be associated with infiltration
of eosinophils and proliferation of microvessels in
gastric eosinophilic granuloma.
Li X et al. J Gastroenterol Hepatol. 2007 Jan;22(1):37-42.
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【背景】胃好酸球性肉芽腫はまれな疾患である。近年この疾患は中国において増加している。本研究では、胃好酸球性肉芽腫の病変形成における肥満細胞の機能と役割を解析した。【方法】23例の胃好酸球性肉芽腫と15例の胃潰瘍のパラフィン切片において、抗ヒト肥満細胞トリプターゼで染色し肥満細胞と脱顆粒した肥満細胞の数を算定した。抗ヒトCD34抗体を用いた免疫染色によって微小血管密度を検出した。肥満細胞の脱顆粒は電顕も用いて観察した。【結果】肥満細胞と脱顆粒した肥満細胞の数は、正常胃粘膜に比べて胃好酸球性肉芽腫と胃潰瘍で増加していた。脱顆粒した肥満細胞の割合は、胃潰瘍に比べ胃好酸球性肉芽腫において増加し、胃潰瘍では正常粘膜と同程度であった。微小血管密度は、正常胃粘膜に比べ胃潰瘍や胃好酸球性肉芽腫で高く、胃好酸球性肉芽腫のなかでは、肥満細胞が多い群に比べ肥満細胞が少ない群で高かった。好酸球と肥満細胞の正の相関がGEGにおいて認められたが胃潰瘍では認められなかった。【結論】胃好酸球性肉芽腫において、好酸球の浸潤と微小血管密度は肥満細胞の増加と関連があるであろう。このことは、好酸球に加え、肥満細胞は胃好酸球性肉芽腫の病変形成に重要な細胞であることを示唆している。 |
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