3)「小児の頭蓋脊椎LCH:単一施設における30年の経験」
Craniospinal Langerhans cell histiocytosis in children:
30 years' experience at a single institution.
Davidson L, et al. J Neurosurg Pediatrics. 2008 Mar;
1(3): 187-95. |
【目的】この研究の目的は、多くの頭蓋脊椎病変を持ったLCH患者を再調査し、長期経過、転帰、治療効果を評価することである。【方法】1976年から2006年の間に単一の小児脳神経外科で経験した44例のLCH患者を、後方視的に再調査した。【結果】症例は、男児29例・女児15例で、年齢は2か月から13歳で、観察期間の中央値は4.5年であった。27例(61%)は単一の骨病変で、12例(27%)は多発の骨病変、2例(5%)が視床下部・下垂体系の単独病変、3例(7%)が多臓器浸潤型であった。単一の骨病変の27例中5例(19%)、多発の骨病変の12例中4例(33%)は、経過観察中に新たな骨病変が出現した。新たな骨病変が生じるまでに期間は、1か月から1年であった。多臓器浸潤型の3例中2例が死亡した。初発が2歳以下であることは、初発時に多発病変であること、その後播種性病変となることの危険因子であった。初発時に多発の骨病変があった、または、単一の骨病変から後に多発の骨病変になった例は、外科的処置のみを受けた2例を除き、すべて化学療法で寛解した。3例で自然寛解が組織的に証明された。【結論】単一の骨病変のLCHは、外科的処置のみで治療可能である。年齢が低い児は、多発性病変を持つことや播種することが多く、通常化学療法を必要とする。自然退縮する病変は切除する必要はないが、生検は診断目的で施行する。 |
5) 「変性性中枢神経LCHのFDG
PET:早期診断の可能性」
18F-FDG PET in neurodegenerative Langerhans cell histiocytosis
: results and potential interest for an early diagnosis
of the disease.
Ribeiro MJ, et al. J Neurol. 2008 Apr; 255(4): 575-580. |
【背景】いわゆる変性性中枢神経LCHは、まれであるが重大な合併症であり、錐体外路症状を伴う進行性の小脳失調と認知障害を呈する。MRIは変性性中枢神経LCHの中枢神経病変を検索する究極の判断基準であるが、この病態における機能的な変化についてはほとんどわかっていない。【目的】変性性中枢神経LCHにおける中枢神経の代謝変化を調べることを目的とする。【方法】変性性中枢神経LCHの7例を前方視的にFDG
PETで調べ、21例の健常対象と比較した。【結果】変性性中枢神経LCH例では再現性のある異常、すなわち、有意な両側の小脳・基底核(尾状核)・前頭葉皮質の代謝低下と、両側の扁桃体の代謝亢進(p
< 0.001)がみられた。これらの解剖学的領域における機能変化は、MRIで明らかな病変が出現する前に捉えられるかもしれない。【結論】変性性中枢神経LCHでは、FDG
PETで再現性のある特徴的な代謝変化を示した。この結果より、FDG PETは、神経放射線学的異常が出現する前に変性性中枢神経LCHの早期診断の手段として有用であるかもしれない。 |
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4)「治療強化による多臓器型LCHの予後改善」
Improved outcome in multisystem Langerhans cell histiocytosis
is associated with therapy intensification.
Gadner H, et al. Blood. 2008 Mar; 111(5): 2556-2562.
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多臓器型LCHは、リスク臓器浸潤がある場合や2歳未満の場合、死亡率が高い。国際共同の無作為割付試験であるLCH-IIにおいて、我々は治療強化を行った、すなわち、アームAではプレドニゾン連日と週1回のビンブラスチンを6週間行った後、6メルカプトプリン連日にビンブラスチン・プレドニゾンを18週間、アームBではそれにエトポシドを加えた。無作為割付を行った193例の高リスク患者においては、6週時点での反応性(アームA
vs アームB:63% vs 71%)・5年時点の生存率(74% vs 79%)・再燃率(46% vs
46%)・後遺症の率(43% vs 37%)に差はなかった。しかし、(1)2歳未満でリスク臓器浸潤のない例は生存率100%で初期反応性はいずれのアームでも80%以上と高かく、(2)リスク臓器浸潤があり6週以内に反応がない例は最も致死率が高く、(3)さらに重要なことに、リスク臓器浸潤のある例ではより治療強度の高いアームBのほうが致死率が低かった(リスク臓器浸潤の有無による比較ハザード率0.54;
95%信頼区間0.29-1.00)。最終的に、LCH-IとLCH-IIにおけるリスク臓器浸潤のある患者を比較により、治療強度を上げることにより、初期治療反応率が上がること(LCH-IアームA
43% vs LCH-IIアームB 68%、P=0.027)・死亡率が下がること(LCH-IアームA
44% vs LCH-IIアームB 27%、P=0.042)が確かめられた。リスク臓器浸潤のある患者においては、治療強度を上げることにより、有意に初期治療反応性を上昇させ死亡率を減少させられる。
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6)
「LCHの晩期障害としての変性性中枢神経病変:日本LCH研究グループからの報告」
Neurodegenerative central nervous system disease as
late sequelae of Langerhans cell histiocytosis. Report
from the Japan LCH Study Group.
Imashuku S, et al. Haematologica. 2008 Apr; 93(4):
615-618.
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11例の日本の変性性中枢神経LCHの患者において、臨床所見・脳MRI所見・EDSSスコアを解析した。LCH初発時、全例が多臓器型LCHで、8例は1-2歳、3例はそれ以上であった。変性性中枢神経LCHは、LCH初期診断から中央値3.9年で出現した。観察期間の中央値4.5年で、6例はEDSSスコア3を超えて進行した。この研究は、変性性中枢神経LCH
のMRIによる早期診断が、特に幼児期早期に発症した多臓器型LCHの経過観察において重要であることを示している。 |
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