1) 「LCH患者における制御性T細胞の増加」
Expansion of regulatory T cells in patients with Langerhans
cell histiocytosis.
Senechal B et al. PLoS Med. 2007 Aug; 4(8): e253. |
背景】LCHは、まれなクローン性の肉芽腫疾患で、主に小児に発症する。LCHは骨・皮膚・肺・骨髄・リンパ節・中枢神経系など様々な組織に病変を形成し、しばしば機能障害を残す。LCHの病態生理は明らかではないが、制御不能なランゲルハンス細胞の増殖が肉芽腫形成の根源と考えられる。本研究の目的は、LCHの肉芽組織において増殖している細胞の性質と免疫メカニズムをさらに明らかにすることである。【方法と結果】40例のLCH患者(年齢0.25?13歳:平均7.8歳)から得た生検組織(24例)と血液検体(25例)において、末梢血と肉芽組織で増加している細胞を同定した。ランゲルハンス細胞の増殖指数は低く約1.9%であり、単球や樹状細胞分画の増加は認められなかった。LCH病変部位は活動性炎症、組織再構築、血管新生の場であり、増殖している細胞の多くは内皮細胞・線維芽細胞・多クローン性T細胞であった。肉芽組織においては、IL-10が多量に分泌され、ランゲルハンス細胞はTNFファミリーに属するRANKを発現し、CD4陽性・CD25高発現・FoxP3高発現である制御性T細胞がT細胞の20%を占め、それら制御性T細胞はランゲルハンス細胞に接していた。末梢血中のFoxP3陽性の制御性T細胞は、活動性病変のあるLCH患者では、対照に比べ増加しており、それらの7例中7例で皮膚の遅延型過敏反応は不良であった。対照的に、寛解後のLCHでは、血中の制御性T細胞の数は正常であった。【結論】これらの所見は、LCHにおけるランゲルハンス細胞の集積は、制御不能の増殖というよりも生存が伸びている結果であり、それに制御性T細胞の増加が関連していることを示している。これらのデータは、ランゲルハンス細胞が生体内での制御性T細胞の増加に関与し、その結果LCH細胞を排除するための宿主免疫システムが破綻する可能性を示唆している。このように、制御性T細胞はLCHにおける治療標的になる可能性がある。 |
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2)
「節足動物の咬刺反応におけるLCHに類似したランゲルハンス細胞の顕著な動員」
Prominent Langerhans' cell migration in the arthropod
bite reactions simulating Langerhans' cell histiocytosis.
Kim SH et al. J Cutan Pathol. 2007 Dec; 34(12): 899-902.
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【背景】上皮のランゲルハンス細胞は皮膚の免疫反応において中心的役割を果たす。抗原の侵入や他の刺激は、ランゲルハンス細胞の動員や遊走を引き起す。したがって、抗原刺激や外傷に起因する皮膚疾患では、ランゲルハンス細胞の動員が生じる。最近、我々は、好酸球とCD1a陽性ランゲルハンス細胞の著しい炎症浸潤を示した、節足動物の咬刺症の症例を数例経験した。これらの例とLCHを区別することは困難であった。【方法】皮膚の節足動物の咬刺反応におけるランゲルハンス細胞浸潤の程度と様式を検討した。節足動物の咬刺反応におけるCD1aの免疫組織化学的発現の特性を、LCHにおけるそれと比較した。【結果】約36%の節足動物の咬刺症では、真皮、特に血管周囲に広範にCD1a陽性ランゲルハンス細胞を認めた。さらに、節足動物の咬刺症におけるランゲルハンス細胞のCD1a発現は樹枝状の様式であり、LCHの腫瘍細胞における発現は明らかに異なり細胞膜と細胞質内であった。【結論】節足動物の咬刺症では、著しいCD1a陽性ランゲルハンス細胞の浸潤を真皮、特に血管周囲に認める例があった。節足動物の咬刺症における、CD1aの樹枝状の免疫組織化学染色様式は、LCHとの鑑別に有用である。 |
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