1)小児LCH(ランゲルハンス細胞組織球症)症例における小脳性運動失調症について
Cerebellar
Ataxia in Pediatric Patients With Langerhans Cell Histiocytosis
Imashuku S, et al. J Pediatr Hematol Oncol 26(11):735-739,
2004 |
LCHでは中枢神経病変をきたすことがあるが、そのメカニズムは未だに解明されていない。LCHに随伴する尿崩症については効果的な治療法があるものの、それ以外の中枢神経病変に対してはまだ有効な治療が確立されていない。筆者らは小脳性運動失調症をきたした3例のLCHの日本人の男児について検討し、同様の小児報告例について文献的に考察した。それら3例とも幼少期(3歳未満)に多発性のLCHを発症し、いずれも化学療法の反応性は良好であったが、3例中2例は後に尿崩症を発症した。3例は4歳から8歳の間に軽度の発達遅滞を伴った運動失調症が認められた。今回の3症例と今までの報告例とあわせて解析すると、LCHの発症年齢の中央値は2.5歳(0.1-6.5歳)、小脳病変/運動失調症の発症年齢の中央値は7歳(3.5-16.5歳)であった。小脳病変を伴うLCHの頻度は低いが、小児LCH患者症例の経過観察をするとき遅発性の中枢神経病変を念頭に置く必要がある。早期に小脳病変をみいだすために頭部MRIを施行することが強く望まれるが、どのような治療によって中枢神経病変の進行を食い止めることができるのかは、今後の検討課題である。 |
|
2)肺病変を伴う小児LCH症例の予後
Outcome
in children with pulmonary Langerhans cell Histiocytosis.
Braier J, et al. Pediatr Blood Cancer. 43(7):765-769,
2004 |
この研究は、肺病変を伴ったLCHの小児の臨床像と予後を明らかにすることを目的としている。方法は1987から2001年までのLCH症例を後方視的に検討した。多臓器病変をもつ症例を浸潤臓器のパターンによって以下の4グループに分類した。グループA(造血器・肺・肝臓ともに病変なし)、グループB(肺病変のみあり)、グループC(肺病変に加え、造血器または肝臓のいずれかに病変あり)、グループD(肺病変はないが、造血器または肝臓のいずれかに病変あり)。多臓器病変をもつ症例は、全例で、この他に皮膚、骨またはリンパ節のいずれかに病変があった。全例、胸部レントゲン検査が施行されており、21例で胸部CTが行われていた。診断のために肺生検が5例で行われていた。220例中36例で肺病変が認められた。2例は肺病変単独であった。多臓器病変は83例にみられ、そのうち肺病変がみられたのは34例であった。肺病変のあった計36例のうち、20例で多呼吸、咳そう、胸部痛がみられた。び慢性間質病変が全例でみられた。呼吸機能検査は9例に行われ、6例は軽度から中程度の閉塞性呼吸障害がみられた。2例の肺病変のみの症例は、診断後2年と2.7年、それぞれ生存していた。多臓器病変のある全症例の追跡期間の中央値は2.1年で、5年生存率は59%であった。各グループの5年生存率は、グループA(n=24):94%、グループB(n=6):83%、グループC
(n=28):23%、グループD(n=25):40%であった。グループBとグループCの間で生存率は有意に差がみられた(p<0.0071)。以上の結果から、結論として、肺病変があっても他の危険因子となる臓器に病変がない場合、予後不良ではないと考えられる。 |
|